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【特別編】 早稲田からJへ――「変革者」岡田優希が書き上げる『革命物語』(前編)

f:id:mi_football:20181115215103j:image早稲田大学ア式蹴球部4年、来期のFC町田ゼルビア入りが内定している岡田優希選手

 

 1110日、関東大学サッカー1部リーグ戦で優勝を決めた早稲田大学ア式蹴球部。昨年関東大学サッカー2部リーグに所属していたことを考えると、この躍進はまさに「下剋上」といえるだろう。

 

 そんな「下剋上」を果たしたチームにおいて、革命の狼煙をあげたのがキャプテンの岡田優希だ。岡田はキャプテンとしてチームをここまで引っ張ってきたと同時に、リーグ戦で得点王の称号を獲得。さらに来年度からはJ2リーグのFC町田ゼルビアに入団することが決まっている。

 

 

 一体何がチームを、そして岡田自身をここまでの立場に押し上げたのか――。本記事では、3つの「変革」をキーワードに、彼の素顔に迫っていく。(注:この記事は1012日に取材した情報を基に執筆しています。)

 

 

 

1章:「キャプテン」として起こした変革

 

 

 元々チームキャプテンを務めようという気はさらさらなかったという岡田。その岡田に転機が訪れたのは昨年12月に行われた天皇杯予選のことだった。新チーム立ち上げ1戦目として臨んだ、立正大学との一戦で0-2と敗戦。スコアでの数値以上に実力差が表れ、内容的にも難しいものだった。怪我の影響で、その試合をベンチの外から観ていた岡田は当時の心境をこう振り返る。

 

 「このままではまずい、自分が立ち上がらないとこのチームは勝てないと思いましたね。僕自身早稲田に所属しているわけですけど、自分のことを早稲田「外」の人間だと思っているんです。第三者的な立場で見れる自分のキャラクターが、このチームでキャプテンになるんだ、という決断を後押ししてくれました。」

 

 こうしてチーム内でキャプテンに就任した岡田は、チームに2つの「変革」を起こした。

 

 1つ目がチームビジョンを明確にするという「変革」だ。元々早稲田大ア式蹴球部には「ワセダ・ザ・ファースト」というチームの文言があった。文字通り「早稲田の人間として1番になれ」という意味を表す言葉だが、岡田は部に加入して間もなくこの言葉自体に疑問を感じていた。

 

 「個人的にその言葉自体をすごく抽象的なものだと感じていたんです。確かにア式蹴球部が創設された当初こそ、サッカーがそこまでメジャーなスポーツではなかった、というのもあってその文言は通用していたかもしれないですけど、当時と今では環境が違います。日本サッカー界であればJリーグがトップディヴィジョンであることは間違いないですし、高校からプロになる選手が出てくるのも当たり前の状況ですからね。」

 

 そこで岡田はキャプテンに就任して以降、「日本をリードする存在になる」という明確なヴィジョンを打ち出し、チームの定める方向性をよりはっきりさせた。

 

 「まだまだ01にしたばかりだとは思ってますけど、チームとしての目標には着実に近づけていると思ってます。その中で僕がキャプテンとして何ができるのか、考えながらチームに働きかけています。」

 

 

 そして2つ目が部内での役割及びルーティンの「変革」だ。

 

 

 今までのア式蹴球部では、守備が苦手な選手にあえて守備練習を課すように、部員に不得意あるいは苦手な部分を補わせる部内の役職や、ピッチ上の役割を課すことが多かった。だが岡田はその論調に異を唱え、選手に輝ける場所を提供して成長を促す方針を採用した。こうすることで部員に各々の性格や苦手な部分を考慮した役職やポジションが与えられ、それに応じた責任を負うと同時に自分自身の課題と向き合うことができるようになった。

 

 

 また日々のルーティンや練習内容にもメスを入れた。例えば、相手を分析するだけでなく自チームの動きを分析する「新」分析班を立ち上げることで、チームとしての課題や狙いを共有しチームの質を高めた。またトレーニング前にヨガやピラティスの導入がされるなど、チームも大きく移り変わっていく過程の中で新たな練習メニューを加え、日々の練習の質を高めていった。

 

 

 本章の最後に岡田自身の稀有なキャプテンシーを現すエピソードを紹介したい。9月初めの関東大学サッカーリーグ戦後期が始まる試合前のミーティング。岡田はリーグ戦が始まるこの状況を「夜明け」と銘打ち、部員を鼓舞した。その時の状況を3年のFW武田太一はこう振り返る。

 

 

 「前半とは全く違う戦いになるという意図でこの言葉を選んだと思うんですけど、言葉のチョイスがいい意味で独特なんです。普段細かく口を出すタイプではないんですけど、岡ちゃん(岡田の愛称)の一言はチームを締めてくれます。」

 

 

 岡田自身も言葉の伝え方には工夫を凝らしている。

 

 「元々言葉の伝え方にはこだわりを持っていました。これまで出会ってきた監督やキャプテンのリーダーシップを参考にして、自分にフィードバックしています。特に意識しているのが言葉を発した後の余白の部分ですね。あえて全部を言うのではなくて、それぞれの人にその言葉の意図を考えさせて、受け取らせることに意味があると思っています。」

 

 

 ピッチの上だけでなく、様々な側面からチームを「変革」していった岡田。考え方や伝え方、といった彼自身の特異なキャプテンシーア式蹴球部の躍進の一端になったのは想像に難くない。

 

 

【後編へ続く】